2009年 08月 31日
智恵子さんの切り絵。 |
高村光太郎の妻、智恵子の切り絵作品があるというのを、
以前何かで読んで、見てみたいなぁと思っていたら、
こんな本がありました。
精神を病み入院、半年ほどして少し落ち着いた頃、
病室を訪れた光太郎が持っていった千代紙に大変喜び、
千羽鶴を折り始めたという智恵子。
やがて「マニキュアに使う小さな、尖端の曲がった鋏」で、
色紙を切り抜き、さまざまな形を作り出していったのだそうです。
「その鋏一丁を手にして、暫く紙を見つめていてから、
あとはすらすらと切りぬいてゆくのだという事である。」
「花」
「小物入れ」
をんなが付属品をだんだん棄てると
どうしてこんなにきれいになるのか。
年で洗はれたあなたのからだは
無辺際(むへんざい)を飛ぶ天の金属。
(中略)
あながた黙つて立つてゐると
まことに神の造りしものだ。
時々内心おどろくほど
あなたはだんだんきれいになる。
(『あなたはだんだんきれいになる』)
「花」
「星空と教会」
三畳あれば寝られますね。
これが水屋。
これが井戸。
山の水は山の空気のやうに美味。
(中略)
坂を登るとここが見晴らし、
展望二十里南にひらけて
左が北上山系、
右が奥羽国境山脈、
まん中の平野を北上川が縦に流れて、
あの霞んでゐる突きあたりの辺が
金華山沖といふことでせう。
智恵さん気に入りましたか、好きですか。
うしろの山つづきが毒が森。
そこにカモシカも来るし熊も出ます。
智恵さん斯(か)ういふところ好きでせう。
(『案内』)
驚くほどの繊細さと、大胆な色あわせで、
花やくだもの、魚、スプーンやお箸、皿の上の食事など身の回りのものを
紙の上に切りあらわしていった智恵子。
その作品に寄り添うように、光太郎の詩が掲載されています。
「あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。」で始まる『樹下の二人』や、
『レモン哀歌』『あどけない話』といったおなじみの詩、
『人に』『風にのる智恵子』『亡き人に』『梅酒』など、
どれも包み込むような愛情と、静かな諦めを感じます。
思わず声に出して読み、
そして涙してしまうのです。
「weekend bookstore vol.5」でお手にとってご覧ください。
以前何かで読んで、見てみたいなぁと思っていたら、
こんな本がありました。
精神を病み入院、半年ほどして少し落ち着いた頃、
病室を訪れた光太郎が持っていった千代紙に大変喜び、
千羽鶴を折り始めたという智恵子。
やがて「マニキュアに使う小さな、尖端の曲がった鋏」で、
色紙を切り抜き、さまざまな形を作り出していったのだそうです。
「その鋏一丁を手にして、暫く紙を見つめていてから、
あとはすらすらと切りぬいてゆくのだという事である。」
「花」
「小物入れ」
をんなが付属品をだんだん棄てると
どうしてこんなにきれいになるのか。
年で洗はれたあなたのからだは
無辺際(むへんざい)を飛ぶ天の金属。
(中略)
あながた黙つて立つてゐると
まことに神の造りしものだ。
時々内心おどろくほど
あなたはだんだんきれいになる。
(『あなたはだんだんきれいになる』)
「花」
「星空と教会」
三畳あれば寝られますね。
これが水屋。
これが井戸。
山の水は山の空気のやうに美味。
(中略)
坂を登るとここが見晴らし、
展望二十里南にひらけて
左が北上山系、
右が奥羽国境山脈、
まん中の平野を北上川が縦に流れて、
あの霞んでゐる突きあたりの辺が
金華山沖といふことでせう。
智恵さん気に入りましたか、好きですか。
うしろの山つづきが毒が森。
そこにカモシカも来るし熊も出ます。
智恵さん斯(か)ういふところ好きでせう。
(『案内』)
驚くほどの繊細さと、大胆な色あわせで、
花やくだもの、魚、スプーンやお箸、皿の上の食事など身の回りのものを
紙の上に切りあらわしていった智恵子。
その作品に寄り添うように、光太郎の詩が掲載されています。
「あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。」で始まる『樹下の二人』や、
『レモン哀歌』『あどけない話』といったおなじみの詩、
『人に』『風にのる智恵子』『亡き人に』『梅酒』など、
どれも包み込むような愛情と、静かな諦めを感じます。
思わず声に出して読み、
そして涙してしまうのです。
「weekend bookstore vol.5」でお手にとってご覧ください。
by weekendbooks
| 2009-08-31 21:44
| こころに残るもの(本)