2010年 09月 13日
秋のこころ。 |
秋—
秋のこころは内にこもつてたのしい。
あけ放してあつた部屋部屋の仕切りに襖をいれる。
見通しの広間はそこで一つ一つの愛すべき小部屋となる。
晩餐のあとの卓がいつまでも歓談の泉となつてゐたながい夏の習慣が自然にあらためられて、
家族のものは晩の食事が終るとまもなくめいめいのそのちひさな部屋へひきこもる。
ピタリと窓を襖をしめきつても秋の夜の空気は清冽な水のやうに胸にすがすがしい。
襖をしめた部屋の何とプライベイトに親しいことか。
そのしめきつた部屋のなかでおのおの自分ひとりのこころを取り戻す。
いつも外に向かつてひらかれてゐた長い夏のこころを、おもむろに自分ひとりの中へ取り戻す。
そのひとりきりの部屋で彼等はめいめいに読み、書き、考へ・・・・・・
そしてわたしは、女であるところのわたくしは、電灯のコードをながくのばして裁縫をする。—
(森田たま 『着物・好色』)
秋のこころは内にこもつてたのしい。
あけ放してあつた部屋部屋の仕切りに襖をいれる。
見通しの広間はそこで一つ一つの愛すべき小部屋となる。
晩餐のあとの卓がいつまでも歓談の泉となつてゐたながい夏の習慣が自然にあらためられて、
家族のものは晩の食事が終るとまもなくめいめいのそのちひさな部屋へひきこもる。
ピタリと窓を襖をしめきつても秋の夜の空気は清冽な水のやうに胸にすがすがしい。
襖をしめた部屋の何とプライベイトに親しいことか。
そのしめきつた部屋のなかでおのおの自分ひとりのこころを取り戻す。
いつも外に向かつてひらかれてゐた長い夏のこころを、おもむろに自分ひとりの中へ取り戻す。
そのひとりきりの部屋で彼等はめいめいに読み、書き、考へ・・・・・・
そしてわたしは、女であるところのわたくしは、電灯のコードをながくのばして裁縫をする。—
(森田たま 『着物・好色』)
by weekendbooks
| 2010-09-13 15:14
| こころに残るもの(本)