『ヨーロッパ退屈日記』 伊丹十三 (2010.10.10) |
毎週日曜日の11:30~、
週末にのんびり読みたい本とおすすめの1曲をご紹介している
「SUNDAY BOOK」のコーナー。
どんなお話をしたのか、「ラジオの時間」のカテゴリーにまとめてみます。
(放送では、パーソナリティー佐藤陽子さんとご一緒させていただいています。)

覚え書きその2。
『ヨーロッパ退屈日記』 伊丹十三 新潮文庫
伊丹十三さんといえば、『お葬式』や『タンポポ』、
『マルサの女』シリーズなどの映画監督としてよく知られています。
この方は元々商業デザイナーをしていらして、
その後、役者さんとして活躍し、
またドキュメンタリーの制作なども手がけた方です。
そんな伊丹さんが書いたこの『ヨーロッパ退屈日記』、
本の表紙には、こんな言葉がかかれています。
「この本を読んでニヤッと笑ったら、あなたは本格派で、
しかもちょっと変なヒトです」
一体どんな内容かと思いますよね。
この本は、今から40年以上前に、
伊丹さんが海外の映画に出演するために滞在した
ヨーロッパでのエピソードを中心にまとめたものです。
パスタのゆで加減で一番おいしい状態を
「アルデンテ」ということや、
「ミシュラン」がフランスのタイヤの会社で、
レストランの格付けをしていること、
シャンパンをオレンジジュースで割った飲み物を
「ミモザ」ということなどは、
今ではみなさんご存知だと思いますが、
この本の書かれた1960年代の初めには、
多分それらの言葉自体、知られていなかったと思います。
そういったことを含めて、
当時まだ珍しかった海外での暮らしぶりや、
料理・音楽・映画・ファッションへのこだわり、
それに、堪能だった英語に関するユーモラスな解説など、
とにかくびっくりするくらい豊富な知識を、
愉快な語り口で綴っている本です。
役者さんですから容姿端麗で、驚くほど絵が上手く、
外国語に通じていて、ヴァイオリンやギターなども弾いたりしたという、
さまざまな才能に恵まれた伊丹さんが、
この作品を書いたのはまだ29歳の頃だったそうです。
私がこの本を初めて読んだのは20歳くらいの頃だったのですが、
大人としてのマナーのようなもの、
一度ヨーロッパを通して見直した「日本」のこと、
ホンモノってこういうものなんだよ、
ということを、堅苦しくなく教わった1冊です。
あとがきで山口瞳さんが、
「マニアワセ、似せもの、月並みに
彼は耐えられないのだ。
私は、この本が中学生・高校生に読まれることを希望する。
汚れてしまった大人たちではもう遅いのである。」
と書いていらっしゃいます。
今時の中・高生がこの本を読むかどうか分かりませんが、
若い方にもこんな大人がいたんだよということを
知ってほしいと思います。
添えられたイラストも個性的で味わい深いので、
そちらも楽しみながら読んでいただきたい1冊です。
おすすめの曲
Michael Franks Antonio's Song(The Rainbow)
ちなみにUAのカヴァーも好きです。
内田勘太郎さんのギターがすてき。
伊丹十三さんについて、
以前こんなことを書きました。