「本にできること」。 |

震災以降、ずっと考えていたことがある。
とにかく食べもの、飲み水、日用品の確保がまず第一。
私が扱っている「本」というものは、
こういう時にはほとんど出番がない。
でもね、本ができること、本でなければできないことが、
きっとあるんじゃないかって。
29日の朝日新聞朝刊、斎藤美奈子さんの「文芸時評」の
『本にできること』を読んで、
そうか、そうだ、と思った。
《こんなときに本?「そんなもの後回しだ」といわれない?》
としながらも
《非常時には旧著に学ぶ点が多い。》と続く。
田辺聖子『欲しがりません勝つまでは』
平山譲『ありがとう』の2作を、
第2次世界大戦、そして阪神・淡路大震災の中での、
それぞれの心のよりどころについて、
作品の解説を交えて紹介している。
最後の部分、少し長くなるけれど引用させていただく。
《私は文学を、読書を過大評価はしていない。
ただ、文学にしかできない仕事があるのは事実だし、
読書でしか得られない効用があることも知っている。
あなたが過去に元気づけられた本、慰められた本を思い出そう。
(中略)
現地にボランティアで入る人は1冊でも2冊でも本や雑誌を荷物に入れていこう。
持ち寄った本で避難所にブックコーナーをつくろう。
避難所が学校で図書館が無事ならば、一部でいい図書館の本を開放しよう。
不安がる子どもたちや高齢者のために読み聞かせをしよう。
新学期がはじまり、被災地が少し落ち着いたら、
小中学生の出番が来る。
ひとり1冊ずつ好きな本を持ち寄って、思いを託した手紙をはさみ、
被災地や避難先の友達に届けよう。
本なんか邪魔なだけ?
そう思うならやめておけばいい。
支援の仕方は多様でよいのだ。》
本というのは、大好きな人は大好きだし、
興味のない人には全く縁遠いもの。
それぞれの距離で、押し付けることなく。
即効性はないかもしれないけれど、
きっと必要な栄養源となるはず。
私はそう思っています。