2011年 04月 25日
『きみが住む星』 池澤夏樹 (2010.10.24) |
・・・ お知らせ ・・・
明日26日(火)は、家庭訪問のため、
14:30までとさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
翌27日(水)は定休日です。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
ボイスキュー エフエムみしま かんなみ(77.7MHz)で昨年10月より、
毎週日曜日の11:30~、
週末にのんびり読みたい本とおすすめの1曲をご紹介している
「SUNDAY BOOK」のコーナー。
どんなお話をしたのか、「ラジオの時間」のカテゴリーにまとめてみます。
(放送では、パーソナリティー佐藤陽子さんとご一緒させていただいています。)

覚え書きその4。
『きみが住む星』 池澤夏樹 作 エルンスト・ハース 写真 文化出版局
今回ご紹介するのは、手紙に関するお話です。
最近はメールでほとんどの用件を済ませてしまうので、
わざわざ手紙を書くというのは面倒でなかなかできませんが、
でも手紙をもらうのはすごくうれしいですよね。
この本は、仕事で世界中を旅することになった男性が、
旅先のあちこちから恋人に手紙を出す、というお話です。
手紙には、それぞれに1枚ずつ写真が添えられています。
エルンスト・ハースという写真家の作品なのですが、
一面の花畑や朝焼け、滝、断崖、ビルに灯ったたくさんの灯り、
海に落ちる虹など、どの写真もとても美しくて、
そしてちょっと不思議な雰囲気があります。
たとえば、ビルのイルミネーションを写したものは、
まるで光を織った1枚の布のように見えます。
その写真に添えられているのは、
主人公が出会った、布を織る男の話です。
それから、雨に打たれた鮮やかな色の花の写真には、
人はみなピカピカのガラスを心にはめて生まれてくるけれど、
生きていくうちに、少しずつそのガラスに傷がついてくる、
でも、傷ついたガラス越しの方が、
世界はきれいに見えるんだよ、という話が添えられています。
そこでもう一度写真を見直してみると、
細く流れ落ちるたくさんの雨が、
ガラスについた傷のように見えるのです。
・・・これは私の深読みかもしれませんが。
「ぼくたちはみんなピカピカの傷一つないガラスを心の窓に嵌めて生まれてくる。
それが大人になって、親から独立したり、仕事に就いたり、
出会いと別れを重ねたりしているうちに、そのガラスに少しずつ傷がつく。
時には凄く硬い心の人がいて、そういう人が大急ぎでそばを走りぬけると、
こっちの心にすり傷が残る。
夜の空から隕石のかけらが降ってきて心の窓にぶつかってはねかえることもある。
少しずつ傷の跡が増えてゆく。
でもね、本当は、傷のあるガラス越しに見た方が世界は美しく見えるんだよ。
花の色は冴えるし、たった一本の草がキラキラ光ることもある。
賢く老いた人たちがいつもあんなに愉快そうにわらっているのは、
たぶんそのためだろうとぼくは思う。
歳をとるって、そうことじゃないかな。
だから元気を出して。
バイバイ」
(「心のガラス窓」)
こんな風に、作者のイマジネーションと写真が共鳴しあって、
恋人を思いやる主人公の温かい気持ちと共に、
とても親密な世界を作り出しています。
そして、読み進んで行くうちに主人公と一緒に、
いろいろな場所へ旅をしたり、
さまざまなものや人に出会ったような気持ちになっていきます。
何気ないけれど、大切なことが書かれた1冊です。
おすすめの曲
Jorge Drexler Todo se transforma
明日26日(火)は、家庭訪問のため、
14:30までとさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
翌27日(水)は定休日です。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
ボイスキュー エフエムみしま かんなみ(77.7MHz)で昨年10月より、
毎週日曜日の11:30~、
週末にのんびり読みたい本とおすすめの1曲をご紹介している
「SUNDAY BOOK」のコーナー。
どんなお話をしたのか、「ラジオの時間」のカテゴリーにまとめてみます。
(放送では、パーソナリティー佐藤陽子さんとご一緒させていただいています。)

覚え書きその4。
『きみが住む星』 池澤夏樹 作 エルンスト・ハース 写真 文化出版局
今回ご紹介するのは、手紙に関するお話です。
最近はメールでほとんどの用件を済ませてしまうので、
わざわざ手紙を書くというのは面倒でなかなかできませんが、
でも手紙をもらうのはすごくうれしいですよね。
この本は、仕事で世界中を旅することになった男性が、
旅先のあちこちから恋人に手紙を出す、というお話です。
手紙には、それぞれに1枚ずつ写真が添えられています。
エルンスト・ハースという写真家の作品なのですが、
一面の花畑や朝焼け、滝、断崖、ビルに灯ったたくさんの灯り、
海に落ちる虹など、どの写真もとても美しくて、
そしてちょっと不思議な雰囲気があります。
たとえば、ビルのイルミネーションを写したものは、
まるで光を織った1枚の布のように見えます。
その写真に添えられているのは、
主人公が出会った、布を織る男の話です。
それから、雨に打たれた鮮やかな色の花の写真には、
人はみなピカピカのガラスを心にはめて生まれてくるけれど、
生きていくうちに、少しずつそのガラスに傷がついてくる、
でも、傷ついたガラス越しの方が、
世界はきれいに見えるんだよ、という話が添えられています。
そこでもう一度写真を見直してみると、
細く流れ落ちるたくさんの雨が、
ガラスについた傷のように見えるのです。
・・・これは私の深読みかもしれませんが。
「ぼくたちはみんなピカピカの傷一つないガラスを心の窓に嵌めて生まれてくる。
それが大人になって、親から独立したり、仕事に就いたり、
出会いと別れを重ねたりしているうちに、そのガラスに少しずつ傷がつく。
時には凄く硬い心の人がいて、そういう人が大急ぎでそばを走りぬけると、
こっちの心にすり傷が残る。
夜の空から隕石のかけらが降ってきて心の窓にぶつかってはねかえることもある。
少しずつ傷の跡が増えてゆく。
でもね、本当は、傷のあるガラス越しに見た方が世界は美しく見えるんだよ。
花の色は冴えるし、たった一本の草がキラキラ光ることもある。
賢く老いた人たちがいつもあんなに愉快そうにわらっているのは、
たぶんそのためだろうとぼくは思う。
歳をとるって、そうことじゃないかな。
だから元気を出して。
バイバイ」
(「心のガラス窓」)
こんな風に、作者のイマジネーションと写真が共鳴しあって、
恋人を思いやる主人公の温かい気持ちと共に、
とても親密な世界を作り出しています。
そして、読み進んで行くうちに主人公と一緒に、
いろいろな場所へ旅をしたり、
さまざまなものや人に出会ったような気持ちになっていきます。
何気ないけれど、大切なことが書かれた1冊です。
おすすめの曲
Jorge Drexler Todo se transforma
by weekendbooks
| 2011-04-25 01:21
| ラジオの時間