「家族をおもって生きてゆく」。 |
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1月9日(月 祝)は、
ユーカリカシテンさん
鳥仙珈琲さん
cosaic lab.さん
をお招きして、「睦月のマルシェ」を開きます。
マイバッグと小銭のご用意をお願いします。
*駐車場が限られているため、できるだけ乗り合わせてお越し下さい*
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毎月第2・第4日曜日、午前11時30分から10分間、
ボイスキュー(77.7MHz)で放送している「SUNDAY BOOK」。
今年最後の放送は25日です。
いつもは1回につき1冊の本をご紹介しているのですが、
今回初めて、2冊の本を同時にご紹介する予定です。
「灰色の輝ける贈り物」 「冬の犬」
アリステア・マクラウド (新潮クレストブックス)
アリステア・マクラウドは1936年、カナダのサスカチュワン州で生まれました。
その後、10歳の時に、両親の故郷であるケープ・ブレトンという島に移り住みます。
このケープ・ブレトンは、カナダの東の端、「赤毛のアン」で有名な、
プリンス・エドワード島の隣にある島です。
成長して炭坑夫や漁師、木こりなどの仕事で学資を稼ぎながら大学へ進んだ
マクラウドは、博士号を得た後、30年以上に渡って大学で英文学を教える傍ら、
こつこつと小説を書き続けました。
今回ご紹介する2冊の短編集、「灰色の輝ける贈り物」と「冬の犬」は、
著者の全ての短編を集めた「Island」という作品集の前半8編、後半8編を、
それぞれ翻訳してまとめたものです。
この短編集に登場するのは、作者のマクラウド自身を映し出すような、
体を張って働く男たち、例えば海と共に生きる漁師や、過酷な状況で働く炭鉱夫、
決して恵まれた環境とはいえない場所で農業に従事する人々、
その妻や母、祖母、娘たち、
そして、故郷を去り、都会でホワイトカラーの仕事に就く息子や孫たちです。
一見、私たちの普段の暮しとはずいぶんかけ離れているようですが、
親子の絆や、世代の間に横たわる深い溝、
逆に年齢を超えた友情や、大切にしている動物への愛情、
それから、何かを選び取ることで失くしてしまうものの大きさに気付くこと、
あるいは、去っていくもの、失われていくものに対する哀しみや口惜しさ、
そういった、今の暮らしとリンクする感情が、あちらこちらに描かれていて、
読み進むうちに、なんだかじーんとした気持ちになっていきます。
国や時代が違っても、考えること、感じることは、
きっとあまり変わらないんだろうなと思える普遍的なテーマを、
こんな風にすくい取って描くことができる作者の力に感心してしまいます。
厳しいけれども美しい自然に囲まれた島、作者自身が住み、愛してやまない
ケープ・ブレトンを舞台に、この島ゆかりの人々の心の動きとその生き方が、
丁寧に描かれた短編集です.
マクラウドが書いたのは、31年間の間にわずか16の短編と長編が1作、
という、大変寡作な作家です。
短編集というと、軽い読み物のような印象がありますが、
これらの短編ひとつひとつが、まるで長い物語のような読み応えがあり、
1冊を読み終えた後、思わず深いため息をつきたくなるような余韻が残ります。
年末年始のまとまったお休みの間に、
こういった、いつまでも心のどこかに残るような、
噛むほどに味わい深い小説を読む、というのも、
上質な時間の使い方になるのではないでしょうか。
・・・と、放送はここまで。
原著のタイトルにもなっている「島」(「冬の犬」)は、
壮大な時間と歴史を、
ひとりの女性の人生に凝縮して描いた、
これこそまさに長編のような作品。
現実の厳しさが、ファンタジィのような結末で締めくくられた、
昔話や伝説のような味わいの1編です。
他にも、
ここからが大人への一歩、という一晩の経験をした少年を描く表題作
「灰色の輝ける贈り物」や、
思い出深い馬との別れに苦しむ父と、それを見つめる息子の心を綴った
「秋に」(「灰色の輝ける贈り物」)、
失われゆく言葉「ゲール語」民謡の最後の歌い手。
その孤独な心の内を描く「完璧な調和」(「冬の犬」)など、
思慮深く生きる人々を、丁寧な筆致で描いた作品集です。
今の自分たちとかけ離れた環境、状況に戸惑いながら読み進むうちに、
なぜこんな風に親しい気持ちになるのかと考え、
ああ、と気付きます。
少し前まで、日本人もこんな風に生きていたのだと。