「A gift ― あの人に、この本を。」 トラベラーズファクトリー 飯島淳彦さんの手紙。 |
先月末から始まった企画展、
3週間は長いな、なんて思っていましたが、
残り5日となりました。
見に来てくださったみなさま、
感想を書いてくださったみなさま、
本当にありがとうございます。
来週火曜日18日まで続きます。
足を運んでいただけるとうれしいです。
少しずつ、展示の様子をお伝えしていこうと思います。
まずは、トラベラーズファクトリー飯島 淳彦さんが選んでくださったのは、
寺山修司編 「旅の詩集」。
40年前、最初にこの本を手にした女性に綴られた手紙には、
飛行船の切手を貼りました。
「40年前、最初にこの本を手に入れて読んだ女性へ」
○○川××子様
見ず知らずのものから、突然お送りする失礼をお許しください。
この本のことを覚えていますでしょうか?
2年前にある古本屋でこの本を購入し、家でパラパラとめくっていたら
見返しページにあなたのサインと日付を見つけました。
あなたが読んでからもうすぐ40年の月日が経つようです。
万年筆で丁寧に書かれていたその文字を眺め、
大変失礼ではありますが、本に綴られている旅の言葉とともに
昭和48年の20代だったあなたのことを想像してしまいました。
例えば、夢を追いかけるために故郷を離れて遠くに旅立つ時、
ふと、本屋で見つけて手に取ったのだろうか?
それとも、親元の小さな街で退屈な仕事をしながら、
旅へ出ることができない憂鬱を紛らわすために読んだのだろうか?
当時、時代の寵児として衝撃的な作品を作り続けていた寺山修司。
旅への衝動と望郷の念が複雑に入り交じった彼の言葉。
どんな想いでその言葉に向き合ったのか、勝手な想像は無限に広がります。
そして、2012年の年の瀬の今、60代となったあなたが再びこの本を
手に取った時、どんな想いがそこに沸き起こるでしょうか。
漂白とはたどりつかぬことである。
たとえ、それがどこであろうとも、
われわれに夢があるあいだは、「たどりつく」ことなどはないだろう。
この本に綴られた一節です。
今、あなたはどこかにたどりついたでしょうか?
私はまだ漂泊のなかにあります。