『花のレクイエム』 |

11日に新着本のアップをしました。
今回のおすすめは『花のレクイエム』(辻邦生 著 山本容子 銅版画 新潮社)です。
城下町の、赤い山茶花の咲く家に住む、美しい年上のひとの思い出(「山茶花」)、
亡くなった叔母がひっそりと守った、若き日の恋(「アネモネ」)、
「プラハの春」動乱で難民となった少女に、勇気と希望を与えた母の言葉(「ライラック」)、
霧深い断崖にたたずみ、海に向かって百合の花束を投げる女(「百合」)…。

12の月の花にまつわる短い物語が、辻邦生さんの美しい文章で紡ぎだされています。
「二人が作品について前以って相談することは一切しなかった」(あとがきより)にもかかわらず、山本容子さんの銅版画は、独自の世界を保ちつつ、短編との見事なハーモニーを奏でています。
(写真は「クレマチス」より)
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