彼女たちのプライド。 |
ひとつめは、坂東玉三郎さんが監督した『外科室』。
泉鏡花の原作で、吉永小百合さんが主演です。
全編ため息の出るような美しさ。
玉三郎さんの美意識が凝縮された50分でした。
たった1度、見つめ合っただけの、そういう「恋」というものが果たして存在するのか、
でもこれを観ると、なんだかうなずいてしまう説得力があります。
後半の、つつじの咲く美しい庭を、ただただそぞろ歩く、絵のような伯爵の一家。
夢と現実のあわいのような、いにしえの幻のような映像。
それとは対照的に、前半の伯爵夫人の、身分の下の人間に対するものの言い方にはっとしました。
(小百合さんはインタビューの中で「伝法な」と言っていました。)
低い声、突きつけるような言い方で、自分の決して明かせない秘密について語るのです。
そこに、彼女のプライドと一途さを感じました。
もうひとつはキーラ・ナイトレイ主演の『プライドと偏見』。
こちらも18世紀という、現代からは離れた時代設定です。
この時代、女の子が女の子でいるということがとても大変で、
(なにせ女性には相続権がないのです!)
つまり結婚することが人生の最大の目標、という今では考えられない状況にありながら、
自分というものを保ち、プライドを持って生きていく主人公。
キーラ・ナイトレイは『パイレーツ・オブ・カリビアン ワールズ・エンド』で、
とうとう船長にまでなりましたが、
ボーイッシュできらきらした魅力が、ここでもあふれていました。
それに加えて、ケイト・グリーナウェイの絵に出てくるようなドレスをまとい、
すぅっとした長い首から肩にかけての線の美しさを見ていると、
まるでロセッティの絵から抜け出してきたような優雅さを感じます。
どちらの映画も、背景の美しさと、主人公それぞれの凛とした表情がすてきな映画でした。
余談ですが、『外科室』は、公開当時Fuuちゃんと2人で観に行った映画です。
あまりにも感激して、続けて2回観ました。
(その時は入れ替え制ではなかったのです。)
なのに、今回改めて観て、内容をほとんど覚えていませんでした…ショック。