本に溺れて。 |
「もしあなたが、これまでに一度も書物に耽溺したことがないとしたら、
それはたとえば桃の木や石榴の木、夏みかんの木や無花果の木、
いちごの茂みや葡萄棚まである庭を所有していながら、
たわわに実ったみずみずしいその果実に、
見向きもしないで暮らしているのとおなじことです。」
そして
「本をひらき、べつの時間を生きること。
つい没頭し、ここではない場所に行ってしまうこと。
身を任せる、もしくは喜んで身を投げだすこと。」
(5日朝日新聞朝刊 マンスリー・ブックマーク 「耽り溺れるための四冊」)
これは、中高生のためのブックガイドのページに書かれたものですが、
もちろん大人にとっても同じこと。
ここではないどこかに行ってしまえる、
私でない誰かになってしまえる、
そして、その世界から去るのが(読み終わってしまうのが)淋しく思える。
読書の愉しみはそういうところにあるのだと思います。
果実のたとえ、なるほどなるほど。