2007年 08月 21日
『武田百合子は終わらない』。 |
日曜日の朝日新聞に武田百合子さんの記事が出ていました。
武田泰淳氏の奥さんで、自身もものを書く人。
『犬が星見た ロシア旅行』『日々雑記』『遊覧日記』などなど、
どの文章も「百合子さん」があふれています。
中でも大好きな『富士日記』。
河口湖に山荘を建て、東京との往復の生活の中からにじみ出る、
夫と妻との軽妙なやりとり。
『「あれえ。全部動かなくなった。とうちゃんがこわしたな。とうちゃんが触ると、写真機でもライターでもすぐこわれるんだから。このまま走ってると車が爆発するかもしれないよ」というと、主人、しょんぼりして助手席にいる。』(昭和四十一年九月)
『九時、山に戻る。灯りという灯りを全部つけた、谷底に浮かんだ盆灯篭のような家に向って、私は庭を駆け下りる。むろあじを焼いて冷たい御飯を食べた。主人は生干しのいかを焼いて、それだけ食べた。食べながら、今日見てきたことや、あったことをしゃべくった。帰って来る家があってうれしい。その家の中に、話をきいてくれる男がいてうれしい。』(昭和四十四年十一月)
『言いつのって、武田を震え上がるほど怒らせたり、暗い気分にさせたことがある。
いいようのない目付きに、私がおし黙ってしまったことがある。年々からだのよわってゆく人のそばで、沢山食べ、沢山しゃべり、大きな声で笑い、庭を駆け上がり駆け下り、気分の照り降りをそのままに暮らしていた丈夫な私は、なんて粗野で鈍感な女だったろう。』(昭和四十九年七月十五日 附記)
以前、友人が、夫妻の住んでいた山荘の近辺を案内してくれたことがありました。
「山荘は老朽化し取り壊されてしまった。」と新聞に書いてありました。
時の流れを感じます。
でも、先日河口湖に行った時、この本に出てくるスタンドの前を通ってきました。
まだ健在でした。
『富士日記』。
時々読み返して、百合子さんの言葉を確かめたくなります。
武田泰淳氏の奥さんで、自身もものを書く人。
『犬が星見た ロシア旅行』『日々雑記』『遊覧日記』などなど、
どの文章も「百合子さん」があふれています。
中でも大好きな『富士日記』。
河口湖に山荘を建て、東京との往復の生活の中からにじみ出る、
夫と妻との軽妙なやりとり。
『「あれえ。全部動かなくなった。とうちゃんがこわしたな。とうちゃんが触ると、写真機でもライターでもすぐこわれるんだから。このまま走ってると車が爆発するかもしれないよ」というと、主人、しょんぼりして助手席にいる。』(昭和四十一年九月)
『九時、山に戻る。灯りという灯りを全部つけた、谷底に浮かんだ盆灯篭のような家に向って、私は庭を駆け下りる。むろあじを焼いて冷たい御飯を食べた。主人は生干しのいかを焼いて、それだけ食べた。食べながら、今日見てきたことや、あったことをしゃべくった。帰って来る家があってうれしい。その家の中に、話をきいてくれる男がいてうれしい。』(昭和四十四年十一月)
『言いつのって、武田を震え上がるほど怒らせたり、暗い気分にさせたことがある。
いいようのない目付きに、私がおし黙ってしまったことがある。年々からだのよわってゆく人のそばで、沢山食べ、沢山しゃべり、大きな声で笑い、庭を駆け上がり駆け下り、気分の照り降りをそのままに暮らしていた丈夫な私は、なんて粗野で鈍感な女だったろう。』(昭和四十九年七月十五日 附記)
以前、友人が、夫妻の住んでいた山荘の近辺を案内してくれたことがありました。
「山荘は老朽化し取り壊されてしまった。」と新聞に書いてありました。
時の流れを感じます。
でも、先日河口湖に行った時、この本に出てくるスタンドの前を通ってきました。
まだ健在でした。
『富士日記』。
時々読み返して、百合子さんの言葉を確かめたくなります。
by weekendbooks
| 2007-08-21 21:38
| こころに残るもの(本)