春を待ちながら 1 |
今まで真っ暗だった夕暮れ時も、わずかに明るくなって。
来月にはもう立春。
まだまだ寒い日が続きますが、春は少しずつ近づいてきています。
そんな、春を待つ間に聴きたいアルバムを10枚選んでみました。
ぼんやりと霞がかかったような、あの独特な早春のひととき。
木の芽が少しずつふくらみ、
ちょっと早いけれど、軽い春の服を着たくなる、
そんな時間を思い浮かべながら…。


1.Crepuscule for Cafe Apres-midi 2
フランス語で「黄昏」という意味の、ベルギーのレーベルから出されたレコードに、
魔法をかけられたように夢中になった時期がありました。
歌は下手だけど(ごめん!)透明感あふれる、
なにものにも換えがたいきらきらした空気がいっぱいの、コンピレーションアルバム。
アンテナ、ペイルファウンテンズ、フレンチインプレッショニスツ、
アンナ・ドミノ、ジェーン・ケリー・ウィリアムス、キャシー・クラレ、
アルカディアンズ、オレンジジュースなどなどの曲が集められています。
フリッパーズ・ギターのファーストアルバム『three cheers for our side』は、
オレンジジュースの曲タイトルから。
* おまけ
同時期の「el」レーベルのコンピレーション『El for Cafe Apres-midi』も、
カラフルなおもちゃ箱のよう。
どちらもジャケットがすてき。


2.ben watt / north marine drive
波にたゆたうようなギターと、まだ少年の面影が残る声。
エブリシング・バット・ザ・ガールを結成する前の、ベン・ワットのソロアルバムは、
大好きな女の子と手を繋ぎたくて、でもそれができずに、
波打ち際の2人の足跡がどこまでも続いていくような、
繊細で内省的な印象を残します。
ロバート・ワイアットとのミニアルバム『summer into winter』も
収められています。
上で紹介した、クレプスキュール、エルと並んで、
もう一つ好きなレーベル「チェリーレッドレコード」(なんてかわいい名前!)から。
* おまけ
ベンとトレーシー・ソーンとのバンド、エブリシング・バット・ザ・ガールのファーストアルバム『eden』は、個人サイトの名前にしちゃったくらい大好きな1枚。
ジャズのテイストとアコースティックな音がほどよく混じって、
20数年経った今でも、時々聴きたくなるのです。


3.ケルカン / 蜜月世界旅行
ピカソの一筆書きのような、ミック板谷さんのイラストが印象的なアルバム。
木村恵子さんのキュートなボーカルと、
窪田晴夫さんの、どこか遠くから聴こえてくるような、
ちょっとくぐもった、雰囲気のあるギター。
オリジナル2曲と、「Berimbau」「I Will Wait For You」
「(I Can't Get No)Satisfaction」などのカバー8曲それぞれに、
映画のタイトルがつけられています。
(『黒衣の花嫁』とか『いつも二人で』『昼顔』とか)
オルガンやピアニカのほどよい味つけが効いていて、
春の宵などにぴったりかもしれません。
* おまけ
ケルカンのもう1枚、『毎日が恋愛映画』も同様の趣向で、
双子のようなアルバムです。

4.アマルコルド / ニーノ・ロータ・メモリアル・アルバム
なんというピンク!
(実際はもう少し抑えた色合いですが…)
1度見たら忘れられない、コケティッシュで魅力的なジャケット。
イタリア映画の名匠フェリーニと、29年間コンビを組んでいたという
作曲家ニーノ・ロータのメモリアル・アルバムです。
『アマルコルド』『8 2/1』『魂のジュリエッタ』『甘い生活』
『サテリコン』『道』などのテーマ曲を、
ジャッキー・バイヤード、カーラ・ブレイ、ビル・フリゼール、
ウィントン・マルサリスなどのジャズ・ミュージシャンが演奏しています。
プロデューサーは、さまざまな話題のアルバムを作っているハル・ウィルナー。
実は、フェリーニの映画で観たことがあるのは『道』だけ。
でも、音楽に身をゆだねていると、映画の持つ独特な雰囲気を感じることができる。
そこが映画音楽の不思議さ、ニーノ・ロータのすごさですね。

5.ラローチャ / モンポウ・リサイタル
スペイン、バルセロナ生まれの作曲家、フェデリコ・モンポウの作品を、
同郷のピアニスト、アリシア・デ・ラローチャの演奏で。
モンポウは、ドビュッシーやラヴェル、サティなどの影響を受けた、
と言われています。
(こう書くと、大体音の傾向がお分かりいただけると思います)
音数が少なく、穏やかで、研ぎ澄まされた一音一音を大切にした曲を聴いていると、
この作曲家が「きわめて繊細な神経を持つ、詩人肌で、内気で、夢みがちで、
寡黙な」(濱田滋郎さんの解説より)人だったことが分かります。
20歳前後の、まだ独学で作曲法を学んでいたころに作られた、
9つの小品からなる組曲『内なる印象』には、
「青春」という人生の春の時期の繊細さとのびやかさが感じられます。
クラシックは苦手、という方にも。
さてさて、長くなったので前半戦はこのへんで。
ほとんど購入できますが、一部廃盤のものもあります。
miracle-muleでレンタルできるように館長に命令…いえ、お願いしますので、
よかったら聴いてみてください。
後半戦はまた後日。