遠い声、遠い部屋 ― 後ろ姿の語るもの ― |

とあるサイトで紹介されていたその絵をどうしても観たくて、
小雨の降る土曜日、上野に行ってきました。
ヴィルヘルム・ハンマースホイ(1864-1916)はデンマークの画家。
室内画や人物画-それもほとんどが妻の後ろ姿-を描き続けた、
「人見知りで、きわめて内向的な変人」(図録の解説より)だったそうです。
繰り返し描かれる、コペンハーゲン・ストランゲーゼ30番地の自宅。
開け放した白いドア、金属製の大きなストーブ。
窓辺、ピアノ、テーブル。
外からの光はほんのりと淡く、物音ひとつしない。
静かな部屋にたたずむ彼女は、
いつも後ろ姿で、黒い服を着て。
時期によって画風が変わったりせず、
鮮やかな、あるいは軽やかな色彩に溢れてもいない。
ひたすら内側にこもるようなモノトーンの世界は、
照明を落とした館内と相まって、
めまいを起こさせるほど強力な何かを発していました。
こんなに魅かれる訳を知りたいのに、
なぜと問いかけても、待ってと追いかけても、
彼女はただ、白いうなじを見せるだけ。
… … … … … …
次回の『新日曜美術館』(NHK)で特集されるようです。
興味のある方はぜひ。